デジカメWatchさんに大口径マウントに関する興味深い記事が投稿されていました。
今回はその記事を読んで、僕が感じた疑問について書いてみたいと思います。
ぽんこ趣ブログでは過去に、大口径マウントのメリットが分からない、という趣旨の記事を何記事か書いています。
そして、キヤノンやニコンには早く大口径マウントのメリットを説明して欲しい、とも書いていました。
その記事をキヤノンの技術者の方が読んだのか(いや読んでないと思いますが)、キヤノンが大口径マウントのメリットを説明して、その様子をデジカメWatchが記事を書くという黄金タックにて記事が書かれています。
理系出身である僕は、こういったネタは大好きなので、もちろん興味深く読んでみましたが、やはり僕の疑問は晴れていません。
今回は、デジカメWatchさんから画像などを参照させていただきつつ、僕が感じたことを書いていきたいと思います。
その大口径マウントの後玉 小さくない?
センサーサイズよりかなり小さい後玉のレンズ構成が小口径マウント、センサーサイズより少し小さめ後玉のレンズ構成が大口径マウントとして紹介されています。
大口径マウントとして紹介されているイメージ図の後玉をよく見てみてください。
僕がまず思ったのは、大口径マウントの後玉ってセンサーサイズより小さくて良いんだ、ということです。
さらに、これくらいの後玉だったらソニーEマウントでも十分配置できそう、ということです。
大口径マウントという部分を強調するためのイメージ図ですら、後玉はセンサーサイズより小さいのですから、キヤノンも暗にセンサーサイズより大きな後玉はない、と言っているようなものかもしれませんね。
また、デジカメWatchには次のように記載されています。
つまり、小口径マウントでは凹レンズ→凸レンズ→凹レンズ→イメージセンサーというレンズ構成にならざるを得ないが、大口径マウントでは凹レンズ→凸レンズ→イメージセンサーというレンズ構成にすることが出来るということでしょうか。
それでは、ソニーEマウントのFE 24mm F1.4 GMを見てみましょう。
大口径マウントのレンズ構成
ソニー FE 24mm F1.4 GMのレンズ構成
凹レンズ→凸レンズ→イメージセンサーというレンズ構成が、大口径マウントのレンズ構成にそっくりですね。
ということは、ソニーEマウントも大口径マウントの仲間入りということなのでしょうか!?
ソニーEマウントよりもさらに小さなマウントでしたら、キヤノンの言う小口径マウントとなると思いますが、キヤノン資料のイメージ図で言えば、ソニーはEマウントは大口径マウントの部類となるような気がしますね。
RF35mm F1.8 Macroの後玉は凹レンズだけど?
デジカメWatchの記事では、先ほどの小口径マウントは、凹レンズ→凸レンズ→凹レンズ→イメージセンサーとならざるを得ない、という説明の後に、RF35mm F1.8 Macro IS STMのレンズ構成の説明に続きます。
恐らく、RFマウントになって設計の自由度が向上したことを主張したいのだと思います。
RF35mm F1.8 Macro IS STMの後玉は、どう見ても凹レンズですね。
凹レンズ→凸レンズ2枚→凹レンズ→イメージセンサーと、どちらかと言えば、先ほどキヤノンが紹介されていた小口径マウントのレンズ構成にそっくりですね。
先ほどのキヤノンの説明では、このような小口径マウントは収差が大きくなるという説明ではなかったでしたっけ?
収差が少なくなるような凹レンズ→凸レンズ→イメージセンサーというレンズ構成になぜしなかったのでしょうか。
さらに、RF50mm F1.2Lを見てみましょう。
RF50mm F1.2L
後玉は凸レンズと凹レンズが張り合わされています。凸レンズと凹レンズを張り合わせることで、収差を抑えつつ光を曲げることが可能なので、レンズ設計では良く見られる手法です。
重要なのは、凸レンズと凹レンズを張り合わせると一枚のレンズとして扱うことが出来るということです。
そのように見ると、RF50mm F1.2Lの後玉は張り合わせレンズの凹レンズであることが分かります。
こちらも先ほどと同様に、キヤノンの主張とは矛盾しているように思います。
ニコンZマウントのレンズは後玉が凹レンズだけど?
最後にニコンZマウントのレンズを見てみましょう。
NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
大口径マウントであるニコンZマウントのレンズはいずれも後玉が凹レンズとなっています。
キヤノンの言い分が正しければ、これらはすべて収差が大きく、画質で劣るレンズということになってしまいますね。
NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sなんかは、相当な凹レンズの後玉ですが、画質が悪いどころか、かなり評判が良いレンズだと思うのですが。
キヤノンの主張は、ニコンには当てはまらないようですね。
むしろ、キヤノンに暗に画質が悪いと言われているニコンユーザーさん達は黙っていて良いのでしょうか。
センサーサイズより大きな後玉はいらないのか?
僕がキヤノンの技術者の方にお聞きしたいのは、その一点です。
より高画質なレンズにはセンサーサイズより大きな後玉が必要、ということであれば、キヤノンRFマウントやニコンZマウントのような大口径マウントが必要です。
一方で、どんなに高画質なレンズであってもセンサーサイズより大きな後玉は不要、ということであれば、ソニーEマウントで十分です。
RF50mm F1.2LやRF28-70mm F2Lですら、イメージセンサーより小さい後玉なのですから、イメージセンサーより大きな後玉は不要、とみなさん何となく思っているのかもしれませんね。
ちなみに、RF35mm F1.8 Macroの後玉が物凄く大きいと思っている方も一部いらっしゃるようですので、補足しておきます。
上のレンズ構成図を一見すると、ギリギリの後玉が配置されているように思う方もいらっしゃるようですが、マウントはそっちではありません。その外側のところです。
後玉以外のレンズが小さいので、後玉が大きく見えますが、マウントに対してはまだ余裕があることがわかります。
マウント径議論について思うこと
ソニーEマウントは小口径マウントと呼ぶのはどうか
キヤノンRFマウントやニコンZマウントを大口径マウントと呼ぶことに異論はありません。しかしながら、ソニーEマウントを小口径マウントと呼ぶ風潮はいささか疑問があります。
本来必要なマウント径よりも小さい、と誤解されやすい呼称は適切とは言いがたいと思います。ソニーEマウントでも十分なのですから。
キヤノンやニコンは自分でハードルを上げすぎ
大口径マウントは画質が良いと大々的にPRするのは別に良いとは思いますが、それであるならば、ソニーEマウントより画質が良いレンズを作り続けるしかそれを証明する手立てはありません。
大口径マウントのメリットが本当にあるならば、ソニーより画質が良いレンズを作れるはずですから。
これだけ自分でハードルを上げたのですから、もはや引き返すことは出来ませんよね。
大口径マウントのレンズの性能が、結局ソニーと同じくらいだったら、大口径マウントって一体何だったの?と皆さん思うことでしょう。
今後のキヤノンやニコンに期待ですね。
キヤノン大口径マウントのメリットに対する僕の考えまとめ
デジカメWatchに掲載されたキヤノンによる大口径マウントのメリットに対する僕の考えを記事にしてみました。
記事の内容からして、僕が望んでいた内容かと思いきや、ちょっとガッカリだったという感想です。(デジカメWatchさんの記事の内容にということではなくて、キヤノンの説明にです)
僕がキヤノンの技術者の方に質問できる機会があれば、イメージセンサーより大きな後玉は必要か、という疑問をぶつけてみたいところです。
ユーザーからすると、出力される画像が全てなので、マウント径なんてどうでも良いと思う方も多いかもしれません。
ですが、ぽんこ趣ブログでは、もう少しこの疑問を追い求めてみたいと思います。