大口径マウントを生かすような巨大レンズはむしろ周辺画質が劣化するかも?ということを考えてみる

大口径マウントは周辺画質が劣化する

大口径マウントは大きなレンズを配置できることがメリットですが、大きなレンズはもしかしたら画質が低下してしまうかもしれない?ということを考えてみたいと思います。

 

大口径マウントにより本当に画面の周辺画質が向上するか?ということを明らかにするため、本ブログでも関連記事を何記事か書いています。

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今回は、大口径マウントを生かすような大きな後玉を採用したレンズでは、周辺画質が改善するのか、について考えてみたいと思います。

 

なお、今回はかなり極端な例で考えていますので、一般的なレンズ(枚数や構成など)とは異なります。実際のレンズはこうはいかないよ、というツッコミは無しで、ぜひとも割り切ってご覧いただければと思います。

 

12/6:タイトルの表現を変更しました。

 

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そもそも周辺画質の劣化(特に周辺減光)はなぜ生じる?

周辺減光

周辺画質の劣化は、「色収差」の2つ(軸上色収差、倍率色収差)、「単色収差(ザイデル五収差)」の5つ(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差)および周辺減光などにより生じます。

各種収差は、ひとつずつ収差を説明していると日が暮れてしまうので、簡単に説明するとすれば、レンズで光を曲げようとするために生じる、と思っていてください。

ここでは、一番原因を分かりやすいであろう周辺減光を説明してみたいと思います。

周辺減光は、主に口径食コサイン4乗則により生じます。

口径食

口径食

上記の写真では玉ボケが、中央では丸くなっていますが、隅に行くに従い欠けていきます。これが口径食です。

ボケの形からレモンボケなどとも言われ、あまり好まれません。

前玉などのレンズ径が不足する場合に、光が遮られるために生じるため、前玉などのレンズ径を大きく設計することで改善します。あるいは、レンズの絞りを絞ることで改善します。

口径が欠けた分だけの光量が減少するため、特に四隅(=周辺)では光量が不足することになります。これが周辺減光のひとつの原因です。

コサイン4乗則

コサイン4乗則

コサイン4乗則は、斜めに入ってきた光は、正面から入ってきた光よりも減衰しますよ、という物理法則です。

Eoという物体の光点の光量は、センサー面Eでは入射角度θのコサイン4乗に比例します。

E = Eo・cos4θ

これは物理法則なので、マウント径が大きかろうが小さかろうが関係ありません。

口径食とコサイン4乗則以外の要因は?

主に口径食とコサイン4乗則以外にも、センサー素子に光が届かないため光が減衰することがあります。

CMOSセンサーでは、各画素が箱型の構造をしており各画素の素子が奥まった場所にあるため、斜めから入射した光は各画素間の壁に阻まれて、画像素子まで届きません。

光が届かなければ、写真が暗くなったりコントラストが低下したり各種収差の原因になってしまいます。

裏面照射

画像素子が奥まっていることが原因のひとつなので、画像素子をセンサー面に近づければ、素子まで光が届く可能性が高くなります。

センサーの構造を改良して、画像素子をセンサー面に近づけたセンサーを裏面照射型センサーと言います。

裏面照射型センサーは、今までのセンサーと異なり、ダイナミックレンジや高感度ノイズ耐性の増加などに寄与するため、現在普及しつつあるイメージングセンサーの多くはこの裏面照射型センサーが採用されています。

 

通常のマウントと大口径マウントの光路図

凸レンズ一枚で簡単な光路図を用いて、収差や減光などによる周辺画質がどうなるか考えてみたいと思います。

巨大なレンズは各種収差が増加する

各種収差は、主にレンズにより光を曲げるために生じます。大きく曲げるほど影響は大きくなっていきます。

通常のマウント通常径レンズの簡易光路図その1

大口径マウント大口径レンズの簡易光路図その1

Eマウントのような通常径のマウントとキヤノンRF/ニコンZのような大口径マウントに収まるレンズの光路図です。もちろん実際のレンズは、もっとレンズの枚数は多いでしょうし、複雑なレンズ構成をしています。

ここでは、中央に配置されているレンズを後玉(センサーに一番近いレンズ)だと思って見てください。

通常径のマウントでは、イメージセンサーと同じ大きさくらいの後玉レンズが配置されています。一方で、大口径マウントでは、大口径マウントを生かした大きな後玉レンズが配置されています。

通常径のマウントと大口径マウントでは、どちらがより大きく光を曲げる必要があるのでしょうか?

図を見る限りでは、大口径マウントですね。つまり、光をより大きく曲げるため収差が大きくなり、大口径マウントの方が周辺画質は劣化してしまうのです。

巨大なレンズの方が周辺減光も増加する

周辺減光は先ほど説明した、口径食による光量の欠け、コサイン4乗則による光量低下、センサー素子への光の到達度により生じます。

口径食は前玉など比較的前方に配置されたレンズで生じ、コサイン4乗則はレンズ径には関係ありません。つまり2つの原因はマウント径とは関係がないことになります。

マウント径による周辺減光が生じるとすれば、残りのセンサー素子への光の到達度となってきます。

通常径マウント通常径レンズの簡易光路図その2

大口径マウント大口径レンズの簡易光路図その2

マイクロレンズ(ソニーの場合はギャップレスオンチップレンズ)を取り除いた簡易光路図です。

各画像素子(紫色)は、各部屋で区切られており、少し奥まってところに位置しています。

上の図では、通常径マウントでは全ての画像素子に光が届いていますが、大口径マウントでは隅(図では一番上)の画像素子への光が遮られしまっています。

つまり、大口径マウントの方が周辺減光が生じる可能性が高いのです。

 

大口径マウントのメリットって?

各種収差や周辺減光により周辺画質が劣る可能性が高い大口径レンズですが、ではなぜキヤノンやニコンはそのようなレンズ配置を見越して大口径マウントを採用したのでしょうか。

大きなレンズの方が解像性能は高くなる

キャンパスに絵を描くことを想像してみてください。小さなキャンパスより大きなキャンパスの方が細かな絵が描けると思いませんか?

レンズも同様に、大きなレンズの方が成形精度は上がり、解像性能が高くなる可能性があります。

でも、キャンパスの大きさといってもB5(通常径マウント)とA4(大口径マウント)くらいの違いでしかありませんし、B5のキャンパスでも綺麗な絵を描ける人はたくさんいますよね。

フルサイズミラーレスカメラメーカーで考えると、より大きなキャンパスを選んだ人がキヤノンやニコン、より細かな絵を書こうと思っているのがソニーと言ったところでしょうか。

でも、より大きなキャンパスを選んだ人は、四隅まで手が届かなくて周辺の画質が劣ってしまうというジレンマを抱えています。

大口径マウントを採用したけど大きなレンズを諦めれば問題ない

大口径マウントを採用したからと言って、大きな後玉レンズを使う必要はありません。それほど大きくない後玉レンズを使用すれば周辺画質は劣化しないため、周辺画質を重視するならば、そのような選択もありだと思います。

以前このブログでも、実際に発売されている大口径マウントの後玉レンズ径を調べてみました。

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結果はというと、大口径マウントの後玉レンズ径は全然大きくなかった、という想定通りの結果でした。

つまり、キヤノンやニコンも後玉径を大きくしてしまうと、周辺画質が劣化することが分かっているため、必要以上に後玉レンズ径を大きくできなかった、と推測できます。

後玉径を大きくできないんだったら、大口径マウントの意味って何なのよ?とみなさん思われるかもしれませんね。

 

なぜキヤノンやニコンは大口径マウントを採用したか

マウント径が大きい方がレンズ設計がしやすいと一般的に言われています。口径が大きい方が、確かにレンズ鏡筒のデザインがしやすいというのはあると思います。でもそれは筒のデザインの話であって、レンズの光学系とは関係ない話ですよね。

そして、ここからは僕の勝手な妄想です。

ユーザーの思い込みを狙った?

大口径マウントの方が何となく画質が良くなる』とユーザーに思わせるのが戦略だとしたらどうでしょうか。確かに全くレンズのことを分かっていない人なら、大口径マウントの方が大きなレンズを使用できるので、周辺画質も良くなりそうと思うかもしれません。

もしそのような思い込みを狙ったのであれば、色々なところのクチコミを見る限り、ある程度成功したのではないかと思います。

中判フォーマットも視野に?

マウント径が中判フォーマットをカバーできるように設計されているのだとしたら、さすがキヤノンやニコンだと僕も思います。

フルサイズフォーマットでは意味をなさない大口径マウントも、中判フォーマットを見越して大きなマウント径を選択したのであれば納得です。

だたし、中判フォーマットのセンサーは対角で55mmなので、キヤノンRFのマウント径54mmやニコンZのマウント径55mmではかなり無理があります。

キヤノンRFマウントやニコンZマウントでは、中判フォーマットは難しそうですね。

無理に設計をして、実際に中判フォーマットを販売するにしても、マウントの設計は使いまわせるかもしれませんが、ボディやレンズは作り直しになるので、ユーザーはボディやレンズを買い直す必要があります。そう考えると、ユーザーにとってメリットはあまりなさそうです。

 

大口径マウントを生かすような巨大レンズは周辺画質が劣化?まとめ

大口径マウントと周辺画質が向上するというイメージを皆さん持っていると思いますが、実際は悪くなる可能性が高いということを簡単な図を用いて説明してみました。

図にしてしまえば、一目瞭然の結果ですね。

センサーサイズに対して大きな後玉レンズはむしろ周辺画質の劣化を招く可能性があり、そうであるならば、残念ながら大口径マウントのメリットありません。

大口径マウントなどという嘘を既に見抜いている方も多いことでしょう。

ここまで、凸レンズ一枚という単純化モデルでは、大口径マウントは画質が劣化すると書いてみましたが、実際のレンズ構成はもっと複雑なのでこのようなことにはならないのかもしれません。

ですが、単純化したモデルではそのように見えてしまうことも事実です。裏を返せば、必ずしも大口径マウントが高画質化に繋がるというわけではないということです。

(冒頭に申し上げましたが、実際のレンズはこうはならないというツッコミはなしでお願いします)

キヤノンやニコンには、カメラを使う全員の方に分かりやすいように、大口径マウントは画質が向上するという事象を説明いただかないと納得がいかないという方も多いと思います。

ぜひとも、キヤノンやニコンには、そのようなことを期待しています。

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最後に、なぜこの記事を書こうと思ったか

僕を含めて、ほとんどの方がメーカーが言う大口径マウントが画質が向上(特に周辺画質に優れる)するという理由を説明できない方が多いと思います。

僕も何となく画質は良くなる可能性もあるけど、残念ながら定量的に説明できない人間のひとりです。

ちなみに、カメラショップのニコンの人に聞いても、「メーカーが画質が良くなると言っているからで理由は分からない」という方ばかりです。

逆にソニーの方に聞くと、「センサーサイズに対して大きさが確保できていればそこまで大きなマウント径はいらないはず。むしろショートフランジバックの方が光量減衰が少なく画質向上の効果が高い。特にニコンの16mmは素晴らしい」という納得感のある回答でした。

ニコンの方よりソニーの方の方がニコンについて理解しているってどうなんでしょうか。

最終的には、大口径マウントもメリットがあるよねということが分かってきそうな気はしますが、いつなんでしょうか。早く説明希望です。理系出身なので、そういった話は大好きです。

大口径マウントのメリットをなかなか説明しようとしないキヤノンやニコンに対する僕の期待を込めてこの記事を書いたというのが経緯でした。

この記事を見られている方で、大口径マウントは画質が向上するということを説明できる方がいらっしゃったらぜひとも説明お聞きしたいと思っています。僕にとってはそれくらい興味のある分野です。