α7 IIIあるいはα7R IIIからソニー α7シリーズデビューという方も多いと思います。
今回は、標準単焦点レンズである『FE 55mm F1.8 ZA』と標準ズームレンズである『FE 24-105mm F4 G OSS』か、どっちがオススメか考えてみたいと思います。
ソニー α7シリーズデビューの方は、ソニーEマウントの初めの一本のレンズ選びに悩む方は多いと思います。
いわゆる撒き餌レンズであるFE 50mm F1.8は光学性能はまあまあの評価ですが、AFが遅いためあまり人気のないレンズとなっています。代わりに人気があるのが、ツァイスブランドのFE 55mm F1.8 ZAです。
一方、標準ズームで人気のあるレンズはFE 24-105mm F4 G OSSですね。
単焦点とズームレンズなので、普段なかなか直接比べない2本ですが、今回はソニーEマウントの初めの一本という観点で、比較してみたいと思います。
Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Z
標準単焦点としては珍しい55mmという焦点距離が特徴です。ツァイスブランドのマークがついていますが、初代α7と同時に発売されたソニー製のレンズです。
先ほども上げましたが、FE 50mm F1.8があまり人気がないため、FE 55mm F1.8 ZAが少々お値段が張るものの、Eマウントで一番人気のある標準単焦点レンズとなっています。
評価サイトのDxOMarkでは、FE 55mm F1.8 ZAはソニーEマウントレンズ中、トップ5に入る解像性能のレンズだと評価されていることからも描画に関する評判がとても良いレンズです。
基本仕様 | |||
---|---|---|---|
レンズタイプ | 単焦点 | フォーカス | AF |
レンズ構成 | 5群7枚 | 絞り羽根枚数 | 9 枚 |
焦点距離 | 55 mm | 最短撮影距離 | 0.5 m |
最大撮影倍率 | 0.14 倍 | 開放F値 | F1.8 |
画角 | 43 度 | 手ブレ補正機構 | |
防塵 | ○ | 防滴 | ○ |
サイズ・重量 | |||
最大径x長さ | 64.4×70.5 mm | 重量 | 281 g |
フィルター径 | 49 mm |
FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
標準域のズーム倍率4倍のズームレンズです。ソニーの中で高級路線のGレンズです。α7R IIIと同時発売されたことから考えてもソニーの自信の程が伺えますね。
少々大きいですが、標準域の4倍ズームと使い勝手が良いレンズです。僕も愛用しています。
基本仕様 | |||
---|---|---|---|
レンズタイプ | 標準ズーム | フォーカス | AF/MF |
レンズ構成 | 14群17枚 | 絞り羽根枚数 | 9 枚 |
焦点距離 | 24~105 mm | 最短撮影距離 | 0.38 m |
最大撮影倍率 | 0.31 倍 | 開放F値 | F4 |
画角 | 84~23 度 | 手ブレ補正機構 | ○ |
防塵 | ○ | 防滴 | ○ |
サイズ・重量 | |||
最大径x長さ | 83.4×113.3 mm | 重量 | 663 g |
フィルター径 | 77 mm |
スペック比較
FE 55mm F1.8 ZA | FE 24-105mm F4G OSS | |
レンズタイプ | 単焦点レンズ | ズームレンズ |
---|---|---|
フォーカス | AF | AF/MF |
レンズ構成 | 5群7枚 | 14群17枚 |
焦点距離 | 55 mm | 24~105 mm |
最大撮影倍率 | 0.14 倍 | 0.31 倍 |
画角 | 43 度 | 84~23 度 |
防塵 | ○ | ○ |
絞り羽根枚数 | 9 枚 | 9 枚 |
最短撮影距離 | 0.5 m | 0.38 m |
開放F値 | F1.8 | F4 |
手ブレ補正機構 | ○ | |
防滴 | ○ | ○ |
最大径x長さ | 64.4×70.5 mm | 83.4×113.3 mm |
フィルター径 | 49 mm | 77 mm |
重量 | 281 g | 663 g |
フォーカス
FE 24-105mm F4 G OSSは、フォーカススイッチボタンで、AFとMFと切り替えることが出来ます。
最大撮影倍率
FE 24-105mm F4 G OSSが、0.31倍とFE 55mm F1.8 ZAの倍以上の値となっています。
最大撮影距離
FE 55mm F1.8 ZAは、0.5mとなっているため、料理などを撮影するテーブルフォトでは少し支障があります。0.5mだと、料理の盛られた皿を撮影するのに、座ったままでは撮影できず、中腰になる必要があります。
FE 24-105mm F4 G OSSは、0.38mとなっているため、料理の皿を椅子に座ったまま撮影が出来ます。
この違いは大きいですね。
ただし、FE 24-105mm F4 G OSSの最短撮影距離ズーム域全域で0.38mとなっているわけではないので注意が必要です。
開放値
単焦点レンズは、焦点距離が固定されるかわりに明るいレンズが設計でき、一方で、ズームレンズは、焦点距離が可変であるかわりに暗いレンズとなってしまいます。
手ブレ補正機構
FE 55mm F1.8 ZAはレンズ内手振れ補正機構がありません。しかし、近年発売されたαシリーズにはボディ内手ブレ補正機構があるため、レンズ内手振れ補正機構はなくても問題はありません。
望遠域の焦点距離では、ボディ内手ブレ補正機構よりレンズ内手ブレ補正機構の方が効果が高いため、105mmまであるFE 24-105mm F4 G OSSはレンズ内手ブレ補正機構があった方が良いですね。
最大径×長さ
FE 24-105mm F4 G OSSの方が、径が2cmほど長さが4cmほど大きなレンズとなっています。サイズはかなり違いますね。
フィルター径
最大径が異なるので、フィルター径もかなり違います。各種フィルターは径が大きくなるほど、価格が高価になる傾向があるので、重要なポイントです。すでに所有しているレンズのフィルター径と同じ径だとフィルターを使い回せるので、そのような観点で見る人もいます。
重量
これだけレンズの枚数やレンズサイズや異なるので、倍以上の重量差があります。FE 24-105mm F4 G OSSは、α7シリーズで使用するならば、ボディとレンズのバランスを見るとギリギリの重量だと思います。
外観比較
レンズの大きさとレンズ径ともにFE 24-105mm F4 G OSSの方がかなり多いですね。FE 55mm F1.8 ZAは金属製、FE 24-105mm F4 G OSSはマウントを除いて非金属製です。
フードはともに花形のビヨネット式です。レンズ本体とは対照的に、FE 55mm F1.8 ZAの方が高さがあります。
Really Right Stuffの底面プレートを装着しているので、カメラも少し大きく見えます。
FE 55mm F1.8 ZAはボディに取り付けてもやはりコンパクトなレンズだという印象です。FE 24-105mm F4 G OSSはボディとデザイン含めてマッチしていますが、バランス的に考えて持ち運ぶならこのサイズが最大だなと思います。
描画比較
FE 55mm F1.8 ZAの焦点距離に合わせて、FE 24-105mm F4 G OSSの焦点距離を55mmに設定して撮影しました。
使用したカメラは、ソニー α7R IIIです。高画素機なので、解像比較をするには持って来いの機種ですね。
ホワイトバランスは晴天固定、三脚使用、2秒タイマーにて複数枚撮影しています。
解像比較
センター
FE 55mm F1.8 ZA | FE 24-105mm@55mm | |
1.8 | ||
4.0 | ||
5.6 | ||
8.0 | ||
11 | ||
16 |
FE 55mm F1.8 ZAは、開放F1.8では軸上色収差が見られ、解像も少しソフトになっています。
F4まで絞ると、軸上色収差はすっきりして解像も高まりました。
F5.6に絞ると、軸上色収差は全く見られず、さらに解像が高まります。
F8とF11は、F5.6からあまり変化は見られません。
F16では、回折の影響で解像が弱まりました。
FE 24-105mm F4 G OSSは、開放F4では軸上色収差は見られませんが、少し解像していません。
F5.6に絞ると、若干解像が高まりますが、FE 55mm F1.8 ZAと比べてしまうと物足りなく感じます。
F8に絞ると、もう少し解像が高まります。
F11では、F8とそれほど変化はありません。
F16では、FE 55mm F1.8 ZAと同様に、回折の影響で解像が低くなりました。
コーナー
FE 55mm F1.8 ZA | FE 24-105mm F4 G OSS @55mm | |
1.8 | ||
4.0 | ||
5.6 | ||
8.0 | ||
11 | ||
16 |
FE 55mm F1.8 ZAは、開放F1.8では、倍率色収差が見られ、少し色づいて見えます。また、周辺減光もあるようです。
F4まで絞ると、軸上色収差は収まって解像が高まっています。まだ若干の周辺減光もあるようです。
F5.6では、周辺減光も見られず解像も高まっています。
F8とF11は、F5.6から変化はあまり見られず。
F16では、画面中央と同様に回折の影響で少しソフトになりました。
FE 24-105mm F4 G OSSは、開放F4では周辺減光がありますが、画面中央のF4の解像からすると頑張っているなという印象です。
F5.6に絞ると、周辺減光が収まり、解像感が高まります。
F8とF11では、F5.6とあまり変化は見られません。
F16では、やはり回折の影響が出始めるようです。
ボケの綺麗さ比較
後日追記予定
最短撮影距離比較
最短撮影距離実測
FE 55mm F1.8 ZA:49cm (レンズ前面から40cm)
FE 24-105mm F4 G OSS @ 55mm:36cm (レンズ前面から21cm)
最短撮影距離時の被写体の大きさ
FE 55mm F1.8 ZA | FE 24-105mm F4 G OSS @55mm |
最短撮影距離は、FE 55mm F1.8 ZAはスペック上では50cmで結果は49cmでした。FE 24-105mm F4 G OSSはスペック上では38cmで結果は36cmでした。おおよそスペック通りの結果ですね。
やはり比べてしまうと、FE 24-105mm F4 G OSSの方が寄れるレンズということが分かりますね。
最短撮影距離が49cmと36cmだったので、撮影できる被写体の大きさもかなり差が出ます。
描画性能のまとめ
以上の55mm同士の描画性能をまとめると次のような結果になりました。
FE 55mm F1.8 ZA | FE 24-105mm F4 G OSS | |
解像性能(中央) | ◎ | ○ |
解像性能(隅) | ◎ | ○ |
ボケ綺麗さ | 後日採点予定 | 後日採点予定 |
最短撮影距離 | △ | ○ |
画面中央の解像は、想定していたよりも差が付いたなという印象です。
僕は想定では、画面中央の解像はそれほどかわらず、ズームレンズであるFE 24-105mm F4 G OSSでは画面端の解像が低下するため、画面端は差が付くと想定していました。結果はそうはなりませんでしたね。
画面端の解像は、FE 24-105mm F4 G OSSは画面中央からの差が少なく頑張っていますが、それでもまだFE 55mm F1.8 ZAの方が優れています。
軸上色収差と倍率色収差は、ともにFE 24-105mm F4 G OSSの方が少ない影響です。FE 55mm F1.8 ZAも開放F1.8では、色収差が見られますが、F4あるいはF5.6まで絞るとほぼ見られなくなりました。
それぞれ解像のピークは、F5.6からF8まで(あるいはF11)までのようです。
高画素機のα7R IIIを使用したので、解像能力には結構差が付いたように思います。α7 IIIなどの無印シリーズやα7S IIの低画素シリーズなどでは、そこまで解像の差は付かないのではと想像できます。
また、レンズを付け替えてテストしてみて分かったことですが、AF速度にかなりの差がありました。AFはFE 24-105mm F4 G OSSの方がかなり速いです。
FE 55mm F1.8 ZAも速いと思っていましたが、FE 24-105mm F4 G OSSと比べてしまうと残念ながら遅く感じます。
FE 24-105mm F4 G OSSが一発でピントが合うのに対し、FE 55mm F1..8 ZAはピントに迷っているわけではありませんが、ピントのフォーカシングに少し時間が掛かっている印象です。フォーカシング速度の問題なので単純にモーターの性能差だと思います。
初めの一本はどっちがオススメか?
F1.8の明るさが必要か?
F1.8の明るさが必要であれば、必然的にFE 55mm F1.8 ZAとなります。ただし、夜間や室内撮影のために、明るいレンズが必要ということであれば、α7 IIIやα7R IIIの高感度撮影性能に頼ってiso感度で対応することも可能です。その場合、F4のFE 24-105mm F4 G OSSでも十分と考えられます。
FE 24-105mm F4 G OSSのサイズ感と重量は許容できるか?
FE 24-105mm F4 G OSSの最大のネックがサイズと重量だと思います。それらが許容できるのであれば、FE 24-105mm F4 G OSSは選択肢から外れてしまいます。
寄れるレンズが必要か?
FE 55mm F1.8 ZAは、寄れるレンズではありません。テーブルフォトやマクロ的に使用したいのであれば、選択肢から外れます。
焦点距離は55mmで問題ないか?
FE 55mm F1.8 ZAは、単焦点レンズです。50mm前後の焦点距離でほぼ問題ないということであれば、選択肢に入ってきます。もしも自分が良く使う焦点距離が良くわからないという方は、まずはFE 24-105mm F4 G OSSを使用してみて自分の良く使う焦点距離を見つけてみる、という考え方も良いかもしれません。
ボディは何を使用するか?
今回のテストでは、高画素機であるα7R IIIを使用しました。高画素ほどレンズの解像性能や収差補正性能が要求されます。今回の結果からも分かった通り、ズームレンズの場合、単焦点レンズより解像能力や収差補正能力はやはり落ちてしまいます。
標準画素機であるα7 IIIやα7 II、低画素機であるα7S IIやα7Sであれば、今回の結果ほど差は出なかったと予想できます。
一方、α7R IIIであれば、G Masterなどの高解像のレンズの方がセンサーの性能を最大限生かせると思われます。
レンズ選びの際には、自分の使用するカメラ機種も考慮してみてください。
FE 55mm F1.8 ZAとFE 24-105mm F4 G OSSの比較まとめ
今回は、ソニーレンズの中で、一番人気の標準単焦点レンズであるFE 55mm F1.8 ZAと一番人気の標準ズームレンズであるFE 24-105mm F4 G OSSを比較してみました。
描画性能については、FE 24-105mm F4 G OSSも大変評判が良いレンズなので、それほど差が付かないと予想していましたが、そこはトップレベルの解像性能を誇るFE 55mm F1.8 ZAといったところでしょうか。
やはりズームレンズはズームレンズ、単焦点は単焦点の枠は出ないのですね。
そんなFE 55mm F1.8 ZAの唯一の欠点があるとすれば、最短撮影距離が50cmと全然寄れないことです。
僕も寄れないことが原因で、FE 55mm F1.8 ZAを使用する頻度が激減してしまいました。
FE 24-105mm F4 G OSSは4倍ズームレンズで、なおかつ寄れるため、とても便利なズームレンズです。旅行先など様々なシチュエーションに対応することが出来ます。
ソニーのカメラで、どのようなシチュエーションが想定されるか想像してみて、自分の用途にあった方を選択してみてください。